ウサギとカウンセリング

【ウサギと学ぶ】カール・ロジャーズのパーソナリティ理論・命題5

この記事では、カール・ロジャーズのパーソナリティ理論に出てくる命題5についての説明に挑戦しています。

命題5のポイントは、行動とは身体が欲するものを満足させるために起こるものであるということです。

カール・ロジャーズのパーソナリティ理論をなんとかわかりやすく説明できないかと考え、できるだけ簡単な言葉で説明しようとして作成した全15話にわたる小説タッチの記事です。

カウンセリング、カール・ロジャーズ、パーソナリティ理論、来談者中心療法、人間理解に興味のある方は読んでみてください。

第5話はこちら

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第6話 学習4日目前半 命題5

また次の日、ノックの音を聞いて、老ウサギは建物のドアを開ける。

 

先生
先生
やあ、いらっしゃい。

 

クー
クー
こんにちは…。

 

先生
先生
…?どうぞ。

 

いつものように小さな椅子にちょこんと座るクーが、少し元気がないように老ウサギには見えた。

 

先生
先生
どうかしたかね?

 

クー
クー
…。

 

先生
先生
…ふむ。

 

クー
クー
…昨日おうちに帰って、お布団に入ったときに、頭の中にいろんな言葉がたくさん飛び交って…。

 

先生
先生
昨日、お布団に入ったときに、頭の中にいろんな言葉が飛び交って…。

 

クー
クー
なんだか大事な発見をいっぱいしたような気がしたんです。

 

先生
先生
なんだか大事な発見をいっぱいしたような気がしたんだね。

 

クー
クー
はい…。でも…。

 

先生
先生
…でも。

 

クー
クー
朝起きたら、みんなすっかり忘れてしまったんです。

 

先生
先生
…朝起きたら、みんなすっかり忘れてしまったんだね。

 

クー
クー
ぐすん。

 

ちょっとだけ涙ぐむクー。

 

先生
先生
クーの心に言葉の流星が降ったんだね。

 

クー
クー
…?

 

先生
先生
私も昔、よくあったなぁ。流星のように言葉が降る夜が…。

 

クー
クー
だけど、みんなどこかに行っちゃいました…。

 

先生
先生
昨日、あなたの心に流星のように降った言葉はね…。

 

クー
クー
はい…。

 

先生
先生
あなたにとって必要なときに、必ずもう一度やってきてくれるよ。

 

クー
クー
本当ですか!?先生!

 

先生
先生
ああ。本当さ。私にはそう信じられる。

 

静かに微笑む老ウサギ。

 

クー
クー
良かった…。

 

ホッとしたような様子のクー。カバンから水筒を取り出し、クピクピと水を飲んだ。

 

先生
先生
少し元気が戻ったかな?さて、今日は命題5だ。

 

クー
クー
頑張ります!

 

命題5

行動とは、基本的には、知覚されたままの場において、有機体が、経験されたままの要求を満足させようとする目標指向的企てである。

(命題はロージァズ全集8巻パーソナリティ理論、第2部、第4章より引用)

 

先生
先生
それではまた、言い換えてみるね。

 

行動とは、基本的には、見えたり、聞こえたり、感じられたりした場面や出来事において、私の身体が、欲するものを満足させようとするために起こる。

 

先生
先生
ここでは、行動というところにスポットがあたっているね。

 

クー
クー
行動は、私の身体が欲するものを満足させるための動きである…。

 

先生
先生
少し感覚的な話をするとね…。私は、行動とは、私の意志を超えたところで起こっていると言いたいんだ。

 

クー
クー
行動は、意思を超えたところで起こっている?

 

先生
先生
そう。ちょっと、常識的な捉え方じゃないかもしれないけどね…。

 

クー
クー
ピンとこないです…。

 

先生
先生
そうだろうねぇ…。ふむ…。する世界と、なる世界の話をしてみようか…。

 

クー
クー

 

先生
先生
クーは、私がする、私がしているというように、ひとつひとつの行動はすべて自分の意志で行っているという感じ、なじみ深いでしょう?

 

クー
クー
…?

 

先生
先生
これまで、ちゃんとしなさい、しっかりしなさい、こうしなさい、ああしなさい、っていろんな人に何度も言われてきたでしょ?。

 

クー
クー
まぁ…はい…。

 

先生
先生
そして、私がしている、私がやっている、…みたいに自分の行動はすべて自分の意志でコントロールできているということが前提の思考になっている…。

 

クー
クー
そうですね。わかる気がします。

 

先生
先生
私は、こういう捉え方を“する世界”とよんでいるんだ。

 

クー
クー
する世界…。

 

先生
先生
一方で、もっと広くて優しい世界がある。それが“なる世界”、ただ私に“なる世界”

 

クー
クー
ただ私になる世界…。

 

先生
先生
私がしている、私がやっているのように、行動を「する」の次元で捉えるのではなくて、今、私は、こうなっている、「なる」の次元で捉えていく感じだね。

 

クー
クー
今、私はこうなっている…。「なる」の次元…?

 

先生
先生
そう。それは、今、ここの私の行動を、ただ聞かせていただくような世界。

 

クー
クー
…よく…わからないです。

 

先生
先生
今、クーは、何をしているところ?

 

クー
クー
え?

 

先生
先生
今、あなた、ここで何をしているの?

 

クー
クー
えっと…。先生のお話を聞いて、混乱しています。

 

先生
先生
今、私は、先生の話を聞いている、になっていて、今、私は、混乱になっている。

 

クー
クー
…?

 

先生
先生
こういう感じで、~する、~しているという言葉を、~なる、~なっているという言葉に置き換える修業をしていくと、自分の身体の動きを現実として捉えることが上手になっていくんだ。

 

クー
クー
…あの先生…。

 

先生
先生
あぁ、ごめんね、難しかったよね。

 

クー
クー
あの…そうじゃなくて…。

 

先生
先生
…?

 

クー
クー
わたしはよく…、こうしたくないのにこうしてしまう。こうしたいのに、こうできないってことがあるんです…。

 

先生
先生
ふむ…。

 

クー
クー
自分の身体を思い通りに動かせないことは、自分が悪いからだと思っていました。

 

先生
先生
うん、うん。

 

クー
クー
だから、今、先生に“する世界”より広い“なる世界”があると聞いて、少しホッとしました。

 

先生
先生
うん…。少しホッとできたんだね。

 

クー
クー
自分はこうしたくないのに、こうなっちゃんだよって…。

 

先生
先生
…自分はこうしたくないのに、こうなっちゃうんだよって。

 

クー
クー
そこを優しく許してもらえたような感覚です…。

 

先生
先生
…そこを優しく許してもらえたような感覚ね。

 

クー
クー
おかしいですかね…?

 

先生
先生
ふふ…。

 

クー
クー
…?

 

先生
先生
“する世界”“なる世界”として捉えられるようになることは、現実が現実として見えるようになるということ。そして、私達は現実が見えると、ホッとするんだよ。

 

クー
クー
現実…。

 

先生
先生
そう。私達の行動は、私達の意志を超えて起こっているという現実がね。

 

クー
クー
…よくわからないけど、優しい感じがします。

 

先生
先生
そう。優しい世界。

 

クー
クー
…。

 

先生
先生
少し休憩しようか。

 

クー
クー
はい。

 

先生