ウサギとカウンセリング

【ウサギと学ぶ】カール・ロジャーズのパーソナリティ理論・命題9、10

この記事では、カール・ロジャーズのパーソナリティ理論に出てくる命題9、10についての説明に挑戦しています。

命題9のポイントは、自己構造は他人との相互作用の結果として生まれるということ。

命題10のポイントは、様々な価値観が決まる根拠となる経験には、自分が直接経験しているものと、他人から投射されているものがあるということです。

カール・ロジャーズのパーソナリティ理論をなんとかわかりやすく説明できないかと考え、できるだけ簡単な言葉で説明しようとして作成した全15話にわたる小説タッチの記事です。

カウンセリング、カール・ロジャーズ、パーソナリティ理論、来談者中心療法、人間理解に興味のある方は読んでみてください。

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第10話 学習6日目~命題9、10~

 

クー
クー
先生―!

 

先生
先生
はい、いらっしゃい。

 

老ウサギは、クーの声を聞き、ドアを開けて声をかける。

 

クー
クー
自分にとってはこの出会いかもしれないです!

 

先生
先生
ん?この出会い…?

 

クー
クー
はい!先生とのこの関係が、自分のところがバーンと始まる、出会いかもしれない!

 

先生
先生
ほうほう。

 

クーは、キラキラと老ウサギを見つめている。

 

先生
先生
ふむ…。

 

クー
クー

 

先生
先生
うん…。昨日ふと思ったんだけどね、クーは私と出会う前に、もうすでに出会っていたのではないかな?

 

クー
クー
え…?

 

先生
先生
あなたがバーンと始まるような出会い、あなたをどんどんあなたにしてくれるような出会いは、もうすでにあったんじゃないのかなって思えてね。

 

クー
クー
え…?え…?

 

クーは目を白黒させている。

 

先生
先生
ふふ。さて、今日は命題を一気に2つ学習するから忙しいよ。中にお入んなさい。

 

クー
クー
は、はい!

 

クーが、パタンと建物のドアを閉めると、いつかどこかで出会った風が、ドアノブにかけられた、手書きのカウンセリングと書かれた看板をやさしく揺らした。

 

命題9

環境との相互作用の結果として、とくに、他人との評価的な相互作用の結果として、自己の構造(the structure of self)がー“わたくしは”もしくは“わたくしに(を)”の特質や関係についての知覚の、体制化された、流動的な、しかし首尾一貫としている概念形式(conceptual pattern)が、これらの諸概念に結びつけられている諸価値とともにー形成される。

 

命題10

いろいろの経験に結びつけられている諸価値や、自己構造(the self structure)の一部である諸価値は、ある場合には有機体によって直接的に経験される諸価値であり、ある場合には他人から投射され(introject)もしくは受けつがれるが、しかし、あたかも直接的に経験されたかのように歪められたかたちで知覚されるものである。

(命題はロジャーズ全集8巻パーソナリティ理論、第2部、第4章より引用)

 

先生
先生
さてさて、この2つの命題を簡単な言葉に言い換えてみるね。

 

自分というまとまった感覚は、主に他人による評価によって、さまざまな価値観と共に生まれる。

人生を大きく左右していく価値観には、自分の身体の直接の経験から生まれたものと、他人の経験をあたかも自分が直接経験したかのように思い込まされているものから生まれたものがある。

 

先生
先生
ひとつずつ、いこうね。

 

クー
クー
はい、お願いします!

 

自分というまとまった感覚は、主に他人による評価によって、さまざまな価値観と共に生まれる。

 

先生
先生
あなたの自分という感覚や、いろいろな価値観は、主に他人の評価によって、形成されたようだよ。実感できるかい?

 

クー
クー
よくわからないです…。

 

先生
先生
ちなみに、ここで言う他人とは、あなたとは別の人という意味だから、家族や友達も含まれるからね。

 

クー
クー
お父さんも、お母さんも他人になんですか!?

 

先生
先生
ふふ。そうなるね。あなたとは別の存在だからね。

 

クー
クー
そうなのか…。うーん…。先生…これって…。

 

先生
先生
うん?

 

クー
クー
すごく…こわいことですね。

 

先生
先生
すごく…こわいこと…。どのあたりが?

 

クー
クー
自分という感覚や、色々な価値観が、他人の評価によって決まってしまうなんて。

 

先生
先生
ふむ。

 

クー
クー
他人次第で自分が決まっていってしまうみたいじゃないですか!

 

先生
先生
そうだね…。それが人間というやつだね。人間は一人では生きていけない。他人との相互作用の中を生きていくしかない。

 

クー
クー
人間は、他人との相互作用の中で生きていくしかない…。

 

先生
先生
そう。だから、自分という感覚の成り立ちや、生きていくためのいろいろな価値観に、他人の評価が非常に強い影響を持つことは仕方がない。特に小さな頃ほどね…。毎日が命懸けだからね。

 

クー
クー
毎日が命懸け…。

 

先生
先生
そう…。さて、次に進もう。

 

クー
クー
はい、お願いします。

 

人生を大きく左右していく価値観には、自分の身体の直接の経験から生まれたものと、他人の経験をあたかも自分が直接経験したかのように思い込まされているものから生まれたものがある

 

先生
先生
うーん、そうだな…。ちょっと待っててね。

 

クー
クー
はい。

 

老ウサギは、奥の部屋から急須と二人分の湯飲みを持ってくる。トクトクと湯飲みにお茶を入れて、クーの前に置いた。

 

先生
先生
はい、どうぞ。

 

クー
クー
あ、ありがとうございます。

 

クーはふーふーと冷ましながら、少しずつお茶をすする。

 

先生
先生
どうかな?

 

クー
クー
おいしいです。なんだかホッとします。

 

先生
先生
おいしいです。なんだかホッとしますね。

 

クー
クー
はい。

 

幸せそうにニコニコしているクー。

 

先生
先生
この湯飲みいいでしょ?私の自作なんだよ。

 

クー
クー
はい、いいですね。

 

小さなウサギさんがよく見てみると、湯飲みには魚の絵が描かれていた。

 

先生
先生
私は、ちょっと絵心があってね。たまに、こういうのを描いたりするんだ。

 

老ウサギは得意気に語る。

 

クー
クー
わたしは絵とか苦手なのでうらやましいです。

 

先生
先生
ふふっ。クーは絵とか苦手なのね。

 

クー
クー
はい…。

 

二人のウサギはお茶をすすりながら、しばらくのんびりと過ごした。

 

先生
先生
さて…、自分の身体の直接的な経験ってわかるかい?

 

クー
クー
うーん…。

 

先生
先生
先ほど、クーは、お茶を飲んだね。

 

クー
クー
はい。おいしかったです。なんだかホッとしました。

 

先生
先生
うんうん。その感じは、あなたの身体が直接的に経験したところだね。

 

クー
クー
ああ、そういうことか。

 

先生
先生
そう。とても自然なこと。難しくない。次にいってみよう。

他人の経験をあたかも自分が直接経験したかのように思い込まされているもの、これはどうだい?

 

クー
クー
うむぅ。

 

先生
先生
先ほど湯飲みの話をしたね。

 

クー
クー
はい。魚の絵が描かれていました。

 

先生
先生
あなた、あの湯飲みどう思った?

 

クー
クー
いい湯飲みだと思いました。

 

先生
先生
ふふ、あの時、私ね、あなたにこの湯飲みを、いい湯飲みとして紹介しているんだよ。わざとね。

 

クー
クー
そうでしたっけ?

 

先生
先生
そうなの。思い込ませようとしてみたの。意図的に。

 

クー
クー
はぁ…。

 

先生
先生
今、クーがその湯飲みに感じている価値観は、クーの身体が直接経験した価値観ではなく、私に思い込まされた価値観かもしれないよ。

 

クー
クー
そうなんですかね…。

 

先生
先生
この湯飲みいいでしょ?

 

クー
クー
いいですね。

 

先生