ウサギとカウンセリング

【ウサギと学ぶ】カール・ロジャーズのパーソナリティ理論・命題18、19

この記事では、カール・ロジャーズのパーソナリティ理論に出てくる命題18、19についての説明に挑戦しています。

命題18のポイントは、人間は、ありのままの体感を自分のものとして認識できているとき、他人のことをよりよく理解し、認めることができるということ。

命題19のポイントは、人間は、ありのままの体感に開かれていくとき、それまでに身につけた、他人の評価に基づいた価値観を脱ぎ捨て、自分の身体の感覚を根拠に価値観をつくりなおしていくということ。

カール・ロジャーズのパーソナリティ理論をなんとかわかりやすく説明できないかと考え、できるだけ簡単な言葉で説明しようとして作成した全15話にわたる小説タッチの記事です。

カウンセリング、カール・ロジャーズ、パーソナリティ理論、来談者中心療法、人間理解に興味のある方は読んでみてください。

第14話はこちら

【ウサギと学ぶ】カール・ロジャーズのパーソナリティ理論・命題16、17 この記事では、カール・ロジャーズのパーソナリティ理論に出てくる命題16、17についての説明に挑戦しています。 命題16のポ...

まとめはこちら

【ウサギと学ぶ】カール・ロジャーズのパーソナリティ理論19の命題 まとめ カール・ロジャーズのパーソナリティ理論に出てくる19の命題についての説明に挑戦してみました。 ここには、全19の命題と、そ...

第15話、最終日の学習~命題18、19~

小さな建物の中、テーブルをはさんで向かい合って椅子に座る二羽のウサギ。

 

先生
先生
さあ、残る命題はふたつ。今日でこの本を使った学習も最後になりそうだね。

 

クー
クー
なんだか緊張してきました。

 

先生
先生
なんだか緊張してきましたね。

 

クー
クー
がんばります!

 

命題18

個人が、自分の感官的・内臓的経験の一切を知覚し、それを首尾一貫した統合されている一つの体系へと受容するならば、そのときには、その個人は、必然的に他のひとびとをよりいっそう理解しており、かつ、他のひとびとをそれぞれ独立した個人としてよりいっそう受容しているのである。

(命題はロージァズ全集8巻パーソナリティ理論、第2部、第4章より引用

 

先生
先生
さて、言い換えてみるよ。

 

私が、自分のありのままの体感を認識し、それらを私という感覚に自由に取り入れることができているとき、そのとき私は、他の人々をよりいっそう理解できる。

そして、他の人々を自分とは違う、ひとりひとりの独立した個人として、認めることができる

 

先生
先生
うん。ここもおもしろいね。

 

クー
クー
ふむぅ。

 

先生
先生
まず、自分の体感をありのままに認識できる状態は、非常に落ち着いて、安心できる状態だといえるね。

 

クー
クー
自分の一部として感じるのが、こわい体感が1つもないときは楽でしょうね。

 

先生
先生
そうだね。そういうときは、他人をよりよく理解できるばかりではなく、他人を自分とは違う、独自性のある人間であると認めたくなるようだよ。自然にね。

 

クー
クー
ふむむ…。先生…。

 

先生
先生
うん?

 

クー
クー
なぜ、自由に自分の体感を認識できるときは、他の人々をよりよく理解できるようになるのでしょう…?

 

先生
先生
うん。そのあたり、この本の作者はとても興味深いことを言っているよ。

 

クー
クー
ゴクリ。

 

先生
先生
もっとも個人的な体験は、もっとも普遍的な体験である。

 

クー
クー
もっとも個人的な体験は、もっともふへんてきな体験である…?

 

先生
先生
そうこれは、人間は、それぞれの経験の世界を生きていると言ってる作者の言葉だからこそ、より興味深いよね。

 

クー
クー
ふへんてき?

 

先生
先生
そうだね。全く違う世界に住んでいる者同士でも、もっとも自分の身体に添った体感、ありのまま、そのままの感じは、共有できる、ということだね。

 

クー
クー
もっとも自分の身体に添った体感、ありのまま、そのままの感じは共有できる…。

 

先生
先生
そう、共感っていう言葉もあるね。

 

クー
クー
共感…。

 

先生
先生
さて、次が最後の命題だ。その前にお茶でも飲もうか。

 

クー
クー
はい。いただきます!

 

大分手になじんだ大きめの湯飲みでお茶をすするクー。

暖かいお茶が、クーをホッとした気持ちにさせる。

 

クー
クー
ホッ。

 

先生
先生
ホッとするね。

 

老ウサギも穏やかにお茶をすすっている。

 

クー
クー
先生、この前、書斎で、先生の若い時の写真を見ました。先生カッコよかったんですね。今もシブいですけど。

 

先生
先生
ふふ。今もシブいね。

 

クー
クー
一緒に映っている小さなウサギさんは、先生の子供さんですか?

 

先生
先生
…。

 

老ウサギは、静かにお茶をすすりながら、目を細める。

 

クー
クー
…?

 

先生
先生
実はね…。私はもう随分前に、子供を亡くしているんだ。

 

クー
クー
え…。

 

先生
先生
ちょうど、あの子があなたぐらいのときにね。

 

クー
クー
…。

 

クーは、急に胸が苦しくなるほど重く悲しい気持ちになった。

 

少しの静寂の後、老ウサギはぽつぽつと語りだす。

 

先生
先生
実は私にはね、歌えない歌があるんだ…。

 

クー
クー
歌えない歌…。

 

先生
先生
そう…。昔、私は海の近い街の方に住んでいてね。

 

クー
クー
…。

 

先生
先生
よく海岸で子供と二羽で手をつないて散歩をしていたんだ。

 

クー
クー
手をつないで…。

 

先生
先生
その時に子供と二羽でよく歌っていた歌があってね…。

 

クー
クー
…。

 

先生
先生
その歌を歌おうとすると、どうしても涙になってしまってね。歌えないんだ。今でもね。

 

クー
クー
その歌を歌おうとすると、涙になってしまう…。

 

先生
先生
そう。どうしてもね。

 

クー
クー
どうしても…。

 

クーには、老ウサギの目に光るものが見えた。

 

クー
クー
エネルギー…。

 

先生
先生
うん?

 

クー
クー
濁流のようなエネルギーが滞っている…。

 

先生
先生
なんだい?

 

クー
クー
いえ、何でもないです。…わたし、がんばります!

 

先生
先生
ふふ、さて、それじゃ、最後の命題に取り組もうか。

 

クー
クー
はい!

 

命題19

個人は、自分の有機的経験をますます多く自分の自己構造へと知覚し受容するにつれて、自分が、歪曲して象徴されていた自分の内面への投影にきわめておおきく基礎づけられた現在の価値体系を、つぎつぎと起こっている有機的な価値づけの過程と置き換えていることに気づくのである。

(命題はロージァズ全集8巻パーソナリティ理論、第2部、第4章より引用)

 

先生
先生
さあ、最後の命題を言い換えてみるよ。

 

私は、自分の身体の体感を、ますますありのままに自分の一部として認識できるようになるにつれて、

他人の評価によって生まれた価値観を、つぎつぎと身体の感じから得られる価値観へと置き換えていることに気づく。

 

先生
先生
人間は、ありのままの身体の経験に開かれれば開かれるほど、他の誰かとの不安定な関係の中で生まれた価値観を脱ぎ捨てて、自分の身体の感じを頼れるようになる。これは心強いことだよ。

 

クー
クー
身体の経験に開かれれば開かれるほど身体の感じを頼れるようになる…。

 

先生
先生
そう。おそらく、自分に自信がある状態というのは、こういうことを言うんだろうね。

 

クー
クー
迷ったら、他の誰かに聞くのではなく、自分の身体に聞けばいいのですね。

 

先生
先生
そう、本来、身体は何でも教えてくれる。頼れる存在なんだ。

 

クー
クー
先生、わたしは、身体の経験に開かれていきたいです!

 

先生
先生
ふふ。身体の経験に開かれていきたいね。さて、そのためにはどうしたらよいと思う?

 

クー
クー
えっと…おびやかされないこと…。

 

先生
先生
そうだね。人間はなにものにも脅かされない時に、私という感覚を作り上げた過去の経験と矛盾するような現在の経験さえ、受け入れることができるようになると学んだね。

 

クー
クー
はい。

 

先生
先生
そして、もうひとつ。

 

クー
クー
もうひとつ?

 

先生
先生
語ること。

 

クー
クー
語ること…。

 

先生
先生
そう声にしながらね、語るんだ。なんにも脅かされていないままに語っているとね、次第に私じゃなくて、身体が語りだすんだよ。

身体の語る言葉が、私に見えなくなってしまった身体の経験を静かに、明るく照らし出してくれる。

 

クー
クー
私じゃなくて、身体の語る言葉が照らしてくれる…。

 

先生
先生
そう。それが、身体の経験に開かれていく道筋だよ。私は、その手伝いをする技術のことをカウンセリング、その手伝いをしてくれる人をカウンセラーと言いたいんだ。

 

クー
クー
先生!

 

急に立ち上がって大きな声を出すクー。

 

先生