3秒で消える世界

忘れてしまうという痛み【3秒で消える世界第3話】

認知症の父の味方であることと、精神科の偏見【3秒で消える世界第2話】 認知症の父とユニークな感性の母をもつ、学習者、黒田明彦の人生ドキュメントです。 第2話のテーマは「父の味方であることと、精...

「おれは、頭がパンクしてしまってよ。」

父がつらそうに繰り返す言葉。

 

忘れてしまうことはしょうがないじゃないか…。

外から、他人ごとで関わっていると、そう呆れてしまいます。

 

父は、何度も何度も同じことを繰り返し言います。

私にとっては、取るに足らないことを繰り返し確認します。

しかし、その時の迫力というかエネルギーはすごいもので、押されてしまいます。

こちらの感情もグイグイ揺さぶられます。

 

父の顔を見てみると、

つらそうな顔、

痛そうな顔に見えます。

 

「どこか痛いのかい?」

 

そう聞きたくなるような顔です。

 

「そうじゃねぇよ。」

 

父はそう答えます。

 

そうか。

 

3秒前のことすら忘れてしまう。

 

何を忘れたのかも忘れてしまう。

 

だけど、何かを忘れているらしいという感覚だけはずっとずっと、繰り返しあるんですね。

 

よくわからないけど、

自分は何かを繰り返し忘れている。

そんな感覚が、終始あるんですね。

そこにはとても大事なことも含まれているかもしれない。

取り返しのつかないことも含まれているかもしれない。

 

それがつらい。

それが不安で不安で。

それが痛いんですね。

 

 

父は今日も私に悲痛な表情で確認しています。

何度も同じ確認を繰り返します。

今日も私は、それをため息交じりに聞いています。

 

しかし、私は今、1日に父のためにいくらか時間を割こうと決めています。

だからその決めた時間に、腰を据えて父の言葉の相(すがた)を追ってみました。

 

「転居の手続きは終わったのか?」

「世帯についての申請は終わったのか?」

父は私に向かって繰り返します。

 

「もう終わったよ。僕が全部やったよ。父さんは心配しなくていいよ。」

私が何度そう答えても、父は3秒ごとに私に同じ質問を繰り返します。

 

何度も何度も繰り返すので、さすがに私も父の言葉の相(すがた)をしっかりと追えるようになっていました。

そして、父の言葉の相(すがた)をそのまま、声にして伝えてみると、若干だけ父の声にする言葉の相(すがた)に広がりができたのです

そして、それによってこちらに感じられるところ、聞こえてくるところがありました。

 

「僕が一緒に住むことになって、父さんが新しく役所に提出しなくてはならない書類があるんじゃないかと心配している感じ?」

 

そうたずねてみると、父の表情が明るくなりました。

 

「僕が一緒に住むことになって、父さんが新しく役所に提出しなくてはならない書類はないよ。ノートに書いておくね。」

3秒ごとにノートを見る父。

「そうか。そうか。俺が役所に提出しなくちゃならない書類はないんだな。」

どうやら、これが父の不安だったようです。

そして、父の3秒ごとの私への質問は止まったのです。

 

父は、何度、同じ言葉を繰り返しても、一人では自分の不安を表す言葉にたどり着くことができなかったんです。

だけど、私が父の言葉の相(すがた)をたどり、一緒に考えれば、一緒に歩むことができた。

二人でやれば父の不安にたどり着くことができる。

それは、3秒で消えてしまう世界においてもです。

 

次はどうなるかわかりません。

明日の父のことも、私のこともわかりません。

だけど、今日、私は父と一緒に父の世界を歩くことができました。

 

3秒で消えてしまう世界を、一緒に。

 

つづく

 

学習者 黒田明彦

 

 

 

 

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