私は精神保健福祉の現場に長く勤め、精神的な不自由を抱えた人の集団生活を支援していました。
今回の記事は、その時に意識して実行していた、ストレスの少ない場の作り方について紹介したいと思います。
ストレスに弱いといわれる、精神障害をお持ちの方々が、どんなところにストレスを感じ、職員がどんなところに気を付けてグループを管理していたのかということを知ることは、人間が、どんなところにストレスを感じやすく、そしてどう対応していけば、そのストレスを減らすことができるのか、ということの少しのヒントにもなるかもしれません。
興味のある方は読んでみてください。
【ストレスの少ない場の作り方】繊細なリーダー
ストレスの少ない場をつくるには、繊細さと社会適応力を兼ね備えた人が、グループのリーダーになる必要があります。
ストレスに敏感でなければ、ストレスの少ない場づくりができないからです。
あるストレス場面に対して、
「あれはストレス感じるだろうなぁ。」
と思えるリーダーと、
「特に気にならない。」
と思えるリーダーでは、起こす行動が全く違いますよね。
ストレスに敏感な人が、ストレスマネジメントが必要な、ストレスに弱い人たちの微細なストレスに反応できるのです。
しかし、ただストレスに敏感なだけな人では、リーダーの役割がこなせません。
「リーダーは今日も体調不良でお休みです。」
すでに十分に機能しているグループのリーダーならそれも面白いかもしれませんが、繊細であるだけでなく、適応力がある人を選ばなければ、リーダーとして機能できません。
【ストレスの少ない場の作り方】場の空気の透明性を保つ
これは敏感な人たちがたくさんいる場の精神衛生を保つのにとても重要なことです。
透明性の保たれた場というのは、上手に空気をよまなくてはならない場ではなく、自分の気持ちを率直に言うことができる雰囲気の場です。
わかりにくいタブーが少ない場はストレスが少ないです。
その場の空気の透明性を保つには、その場で力を持っているリーダーが、場で起こったいろいろなことに対して率直な発言、態度を見せ、それが許される場であるということを実際に行動で示す必要があります。
飾らず、形式ばりすぎず、素直な態度を見せ続けること。
たとえば場の緊張が高まっているような場面では、
「なんか緊張するね。」「ピリピリしているね。」
というような言葉を率直に声にする。
場に対する率直な反応を隠さず、むしろ積極的に声にする。
これら率直な言葉は、周りの人の緊張度を下げ、ホッとさせます。
また、場に、素直なことを言ってもいいという風潮ができあがれば、相談ごとも増え、コミュニケーションは活発化しやすいです。
正直にものを言っていいんだ…。
そんな雰囲気がある場は、ストレスが低いです。
【ストレスの少ない場の作り方】感情の流れに敏感
多くの人が活動する場で、対人関係におけるトラブルはつきものです。
対人関係におけるトラブルの原因は、感情エネルギーの滞留です。
ストレスの少ない場にするには、グループメンバーの感情エネルギーが爆発する前に適切に処理する必要があります。
場を見渡し、グループのメンバー同士のやりとりを敏感に見守ります。
「あれ、今のやりとり、感情が高まりそうなやり取りだな…。」
そして、このように、感情エネルギーが生まれていそうな人がいたら、どこかで爆発してしまう前に、先に処理をするのです。
さっきの○○さんとのやりとり大丈夫だった?
ここのところ○○さんとうまくいってますか?
感情が生まれそうなやりとりを目撃したときは、積極的に声をかけます。
しかし、感情が生まれていることを察しても、吐き出してもらえなければ意味がありません。
そういう意味でもストレスの少ない場にするには、普段から相談しやすい関係、雰囲気が必要です。
【ストレスの少ない場の作り方】人間関係の把握
細かな人間関係に配慮がない場は、ストレスが大きくなりやすいです。
ストレスの少ない場を作るには、グループメンバーの人間関係に敏感になる必要があります。
「あの人は、いつもこの人の前ではリラックスしているな」
「少しあの二人の関係には、緊張感があるな」
このようなことをしっかり敏感に感じ取って、フォローする必要があります。
グループの中で役割分担があるときは、うまくいかない組み合わせができないように、そして、つらい思いをする人がいないようにと、うまく調整する必要があります。
【ストレスの少ない場の作り方】理解力の差を理解する
それぞれの人の理解力の差に考慮がない場では、ストレスは生まれやすいです。
ストレスの少ない場を作るには、人によって理解力には大きな差があることを知る必要があります。
それは、相手に伝えたことと、相手に伝わったことがズレてしまうことが、どれだけ当たり前のことであるかということを理解するということでもあります。
常にやりとりのズレを想定し、常に相手に確認していく。
そうすれば、聞き違い、思い違い、認識のズレに腹を立てず、むしろ当たり前のように受け止めることができます。
相手の状態、理解度、緊張度の見立てをしっかりして、相手にしっかりと伝わるような工夫を怠らないようにしましょう。
理解できたことの確認が上手くいき、意思疎通がとれていると感じられる場は、お互いのストレスが少なくなります。
【ストレスの少ない場の作り方】行動で示す
理不尽な要求が飛び交う場は、ストレスが高まりやすいです。
ストレスの少ない場を作るには、それぞれが自分の役割を行動でしっかりと示す必要があります。
動き方、休み方、物事に望む姿勢。
人は、自分自身で出来ていないことを他人に要求してくる相手にはストレスを感じます。
信頼は発言と行動の一致から生まれます。
皆が、発言に見合った行動を常に意識している場は、ストレスを低く保つことができます。
【ストレスの少ない場の作り方】調子を崩している人に適切に接する
調子を崩している人が、無理をしているような場は、ストレスが生まれやすいです。
ストレスが低い場をつくるためには、精神的、身体的に調子を崩しているように見える人に早めに声をかける必要があります。
調子が悪いときは、誰かの配慮を感じるだけで、とても安心し、落ち着きます。
体調管理の甘さを責めるのではなく、状況を聞いてあげて、その人の気持ち、都合を聞いてあげましょう。
そうすることで、結果的にその調子を崩している人も、その周りの人も、ストレスなく、無理をしなくて良い状況を作ることにつながります。
体調不良の人に、すぐに適切な対処をしてくれる場は、ストレスが下がります。
【ストレスの少ない場の作り方】平等性の意識
平等性が揺らいでいる場には、ストレスが生まれます。
ストレスの少ない場を作るには、リーダーがつねに平等性を意識する必要があります。
たとえばリーダーが、特定の誰かとだけ、集中的にコミュニケーションをとっているとか、グループの中にある小集団と、特に関係が良いような状況は、その他の人のストレスになります。
また、人によって許可することと、許可しないことが違う場合、その理由を納得できるように説明できなくてはなりません。
ストレスの少ない場を作るには、リーダーは、とにかく平等な対応を意識して、どの人ともバランスよく接する必要があります。
【ストレスの少ない場の作り方】パワーバランスを偏らせない
場のパワーバランスが偏ってしまうと、ストレスが生まれやすい場になってしまいます。
ストレスの少ない場を作るには、常に全体を見渡し、場の雰囲気を見極める必要があります。
リーダーは、グループの中で、盛り上がっている人達のところには行かないようにします。
グループの中で力をもっているリーダーが、盛り上がっている人達に交じってしまうと、場のエネルギーが偏ってしまい、その他の人の居心地は悪くなり、ストレスが高まってしまいます。
すでに盛り上がっている人達には、とりあえず助けが必要ないと判断出来たら、他の人達の様子をしっかりと見ていきましょう。
【ストレスの少ない場の作り方】負荷を微調整する
グループの中で課せられている役割の負荷が、その人に見合っていないと、ストレスが高くなります。
ストレスの少ない場を作るには、グループメンバーが担っている役割が丁度良い負荷である必要があります。
当然グループの中で、高い負荷がかかってしまっている人は、ストレスが高いです。
しかし、難しいところで、負荷が低すぎてもストレスが高くなってしまうのです。
したがって、リーダーは、それぞれの人が、丁度良い役割、丁度良い負荷を与えられているかに常に気を払う必要があります。
そのためにもリーダーは、グループメンバーにかかっている負荷を適切に見極めることが必要です。
自分にとってこの仕事・役割がどれほどの負荷になるかと考えるのではなく、その人にとってどれくらいの負荷になっているかを見る目を持ちましょう。
普通なら…とか、他の人ならとか…、私なら…ではなく、その人にとってどうか、というところで、負荷を判断しいていきましょう。
【ストレスの少ない場の作り方】他人の積極的な行動をリスペクトする
意図のある積極的な行動が理解されずに、否定されたとき、その場には強いストレスが生まれます。
ストレスの少ない場を作るには、人の善意や積極的な意志から生まれた行動をリスペクトし、できるだけ活かそうとする雰囲気が必要です。
たとえそれが、そのとき、その場にぴったりしていない行動ても、その人から生まれたエネルギーを尊重し、尊敬します。
その行動がどうしても評価できないときでも、相手の意向をしっかりくみ取ります。
そして、その行動の動機をしっかりと受け止めましょう。
【ストレスの少ない場の作り方】おわりに
いかがだったでしょうか。
人は本当にいろいろなものにストレスを感じているようです。
もし、本当にストレスの少ない場をつくりたければ、このようにさまざまな気遣いが必要だということですね。
目から火が出るほど忙しい毎日。
そして、自分の身を守るだけで手一杯というのが実際のところかもしれません。
しかし、どうすればその場のストレスが下がるのかということがわかっていれば、そして、リーダー1人の力だけではなく、皆がストレスの少ない場にするための意識をもてば、今よりは、ちょっとでもストレスの少ない場で活動していくことができるかもしれません。
日本は、ストレスの高い、厳しい環境で鍛えられてこそ…、という考え方が根強いかもしれません。
しかし、その状況で、安定したパフォーマンスを出し続けられない人たちがいることも確かです。
昔は、スポーツ中は水を飲んではいけないという常識がありました。
今はその常識は変わりましたよね。
人間が、関係が、どうあるときに人間は最高のパフォーマンスを維持できるのか。
そういう常識は、まだまだ変わっていくことができる。
私は、ストレスの低い場でこそ、人間は意欲的に、元気に、活発に活動していくことができると信じています。
何と言うか…活躍できる人が、一人でも増えたほうが、世の中楽しいじゃないですか。
多感な凡人 黒田明彦
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逆エンパス体質って知ってますか。
