カウンセリング

相談とカウンセリングの違いの体験的理解

今回は、カウンセリングの学習を続けながら、精神保健福祉の業界で支援員やサービス管理業務をやっていた私の体験から、カウンセリングと相談の違いについて書いてみようと思います。私は、精神保健福祉の業界で働く前からカウンセリングの学習を始めていましたので、ずっとカウンセリングマインドをもちながら相談業務に取り組んでいたということになります。今回のポイントは、相談とカウンセリングに大きな違いがあるかということになります。

相談とカウンセリングの違いの体験的理解ー言葉の意味

まずは相談とカウンセリングという言葉の一般的な意味について確認しておきます。

相談

物事を決めるために他の人の意見を聞いたり、話し合ったりすること。また、その話し合い。

カウンセリング

生活や一身上のことで悩みをもつ人に対し、話し合うことによって、その人が自ら解決できるように援助する活動。二〇世紀初頭のアメリカで始まり、進路相談、学業相談のほか精神的健康の回復、維持など広い分野で応用されている。

相談とカウンセリングの違いの体験的理解ー相談の実際

私が経験してきた精神保健福祉の相談業務には、支援員として施設利用者と関わったというものと、サービス管理責任者として施設利用者と関わったものがあります。その2つの立場における相談業務を簡単に説明してみます。

支援員としての相談業務

支援員として、精神保健福祉の現場で行った相談業務は、施設利用者と目的をもった活動を共にしながら、日々発生する生活上や、人間関係上の問題について相談を受けるというものでした。

相談対応の基本は傾聴することです。傾聴とは、利用者が何に困り、どうしたいのか、また支援者にどうしてほしいのかということを利用者自身の言葉で明確化するお手伝いのことです。そして、それは悩むところだね、つらいね、というような言葉をかけてあげることで、そこに付随する利用者の不安感情等を受容することも含みます。

傾聴を経て、ある程度支援者が落ち着いた後に、その場合どんな行動をとるのが妥当か、そして、支援者側としては、どのような対応ができるかということを提示します。

実際は、本人の状況整理を手伝うことができれば、強力なアドバイスはほとんど必要なく、与える情報は参考程度ということが多かったです。大事なのは利用者が何に困っていて、それに対してどんな感情をもっているかということが、利用者本人にとって明確になることなのです。

このように、私の支援者としての相談業務の考え方は、支援者の意見や情報提示が関りのメインではなく、傾聴がメインであるというものです。支援者の強力なはたらきかけが必要なケースは相談ではなく、介入という枠組みの支援が必要で、それは相談とは分けてとらえています。

基本的に相談という形で対応するときは、支援者のアドバイスで、利用者の問題を解決するということを目的としていない。

サービス管理責任者としての相談業務

立場によって相談の内容は変わっていきます。施設におけるサービス管理責任者という立場になってくると、施設利用の計画を利用者と共に作成していくという役割がでてきます。これには、利用者のニーズを傾聴し、それに合わせたサービスを提示し、選んでもらうということが大事になってきます。

利用者の発言を聞き、そこから感じ取れるニーズを両者の間で明確化し、既存のサービスとマッチングさせるようなやりとり。私はこれも相談支援ととらえています。

ここでも、利用者のニーズを両者の間で明確化させるための丁寧な聞き取り、傾聴が重要になってきます。利用者のためになる支援にしていくためには利用者の言葉をしっかりと聞き、利用者の希望を、目標を、人生を、しっかり聞かせていただく必要があるのです。

相談とカウンセリングの違いの体験的理解ーカウンセリングとは

ここから少し、カウンセリングの一般的な意味ではなく、私の経験的理解を紹介します。

カウンセリングの体験的理解

カウンセリングとは、その関りを経て、クライエントが精神的に成長することを目指した直接的な関りである。

カウンセリングの場面でクライエントは、普段は誰にも話せないような自分の経験、感情の言葉をしだいに語れるようになっていきます。その中で、普段は考えもせず、思いつかないような自分の言葉に出会うことができるようになるのです。

このようにクライエントが深々と語り、自分自身の気づきの言葉にであっていけるようにと、カウンセラーの取り組みは特化されています

クライエントが普段以上に深い自分を語ることができるように。

新鮮な自分との出会い、気づき、自己受容が生まれるように。

その環境づくりのために、不必要なものを徹底的に排除するのがカウンセラーの仕事です。

カウンセラーが自分の言葉でほとんど語らないのもその一つ。

カウンセラーが質問に安易に答えないのもその一つ。

カウンセラーがカウンセリング場面以外で、クライエントと関係を持たないように努めるのもその一つ。

カウンセラーは評価的態度をもたない

また、クライエントが深々と自分を語りやすくするために、カウンセラーは自身の価値観でクライエントの言動の良し悪しを判断しないという態度を堅持しています。

カウンセラーはクライエントの言動を肯定も否定もしません。そのままに受け止めようとします。

自分の語った言葉に対し、カウンセラーからの価値づけのない応答を受けているクライエントは、自分の語った言葉から、自分の感覚をありのままに味わうことができるようになります。

それが良いか、悪いかではなく、それは、ただそうである、というように受け止められるようになるのです。

肯定も否定もないカウンセラーの応答により、クライエントは自己受容へと自然にはこばれていく。

また、他者の評価にさらされない自分の言葉は、自分自身の感覚を探す道しるべにもなります。

そうやって、クライエントは、自分自身の言葉を道しるべとして、深々と自分の経験や、感情とであっていくことができるのです。

相談とカウンセリングの違いの体験的理解ーまとめ

相談は相手のニーズを傾聴し、両者の間でそのニーズを明確化し、本人が主体的にその問題に取り組めるよう支援することであると言えます。

カウンセリングは、クライエントが自由に語り、開かれた自分の体験、感情をありのままに受け入れていくことで、クライエントの精神的成長を促進するための支援であると言えます。

体験的結論

相談においても、カウンセリングにおいても相手中心、傾聴中心の関りであるという基本的態度は変わりません。

私自身の経験では、基本的な相談支援は、相談者の言葉7、支援者の言葉3ぐらいの割合で構成されているコミュニケーションが好ましい形だと思っています。

ただ、相談を望む相手の中には、とにかく支援者からのアドバイスを求めているということもあり、場合によってはそれに答えることがメインになることもあります。

カウンセリングの場合は、この数字が、クライエントの言葉9、カウンセラーの言葉1という、かなり偏ったコミュニケーションになります。そして、相談とは違い、この数字が大きく上下することはほとんどありません。

前述のとおり、カウンセリングは、クライエントが語り、カウンセラーはそれを受け止めるという構図に特化しています。クライエントがカウンセラーにアドバイスを求めた場合、カウンセラーはそのアドバイスを欲しがっているというクライエントの気持ちを受け止めるという方法でコミュニケーションを成立させるのです。

したがって、相談という枠の中でもカウンセリングのようなことはできますが、カウンセリングという枠の中では相談のようなことはできません、という認識が妥当であると思います。

カウンセリングの最中に、相談に切り替えるという対応もあるかもしれないが、それが好ましいことかどうかは判断が分かれる。私の経験では、一度相談に切り替わってしまったカウンセリングが、その後本来の機能を取り戻すことは相当に難しい。

終わりに

相談とカウンセリングの違いについて考えてみました。私は常々、カウンセラーだけでなく、対人支援に関わる全ての人に、語り手ではなく、聞き手であってほしいと思っています。相手のための支援をしたいのであれば、相手のニーズに耳を傾けなければ始まりません。その相手のニーズというものを、支援者の客観的な状況判断からではなく、相手のひとつひとつの言葉のすがたから聞き取ってあげてほしいのです。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

カウンセラー 黒田明彦