カウンセリング

簡易傾聴法ー苦しむ人のそばにいるための傾聴

身近な人が、大きな苦しみに出会っているとき、そばにいるだけでも、とても苦しい気持ちになり、居ても立っても居られなくなってしまいますね。

できれば苦しむ相手を助けてあげたい。だけど私の力では助けてあげられそうもない。何もしてあげられない私。それでもせめて、せめてそばにいてあげたい。そんなあなたの気持ちを少しでも楽にできればとまとめた簡易傾聴法です。

カール・ロジャーズの来談者中心療法をベースにした傾聴法をどなたにでも日々の生活でやってみることができるようにできないかと考えました。

カウンセリング学習記事の案内所 お陰様で、黒田明彦のカウンセリング学習記事も増えてきましたので、どんな記事があるかを一度に見れるようにまとめた記事を作成いたしま...

この簡易傾聴法が役立つ場面

・気持ちがすごく落ち込んでしまっている。

・とても苦しい現実に直面している。

・悲しみ、怒りの感情に包まれている。

・取り乱している。

そんな相手のそばに、あなたが少しでも落ち着いていられるようになるための簡易傾聴法です。

この簡易傾聴法に何が期待できるか?

・相手の今ここの、安心感を少しだけ高められる。

・相手が苦しみの中から、改善に向かう行為を、相手自らの意志で選ぶという方向に少しだけ傾くこと。

・苦しむ相手のそばにいる、あなたの気持ちが少しだけ楽になる。

簡易傾聴法の目標

・相手の今ここの自分を語ってもらうこと。

・相手の語りを邪魔せず、語りを支えること。

簡易傾聴法の具体的方法

①10分~30分ぐらい、あなたのために相手に時間をとってもらう。

②今の気持ちを聞かせて欲しいと伝える。

③頷きながら、相手の話す言葉を聞く。

④相手の語りをせき止めないように意識する。

⑤あなたの言葉の意味で考えず、相手の言葉のすがたを変えないように聞く。

⑥相手の語りが途切れたら、あなたが覚えている相手の言葉のすがたを少しだけ声にして、相手に確認してみる。

⑦相手の反応を待つ。

⑧反応がなければ、もう少し覚えている相手の言葉のすがたを相手に確認する。

⑨また相手が語りだす。

⑩③に戻る。

⑪時間がきたら、お礼を言って終わる。

簡易傾聴の具体的方法の説明

①10分~30分ぐらい、あなたのために時間をとってもらう。

「今少し、時間いいかな?10分程度でいいんだけど。」このように、最初からあなたのほうで、ある程度時間を区切りましょう。大事なのは、あなたのために時間をとってもらうというお願いの仕方です。「相手のために傾聴してあげる」という態度は、相手のためになりにくい傾聴の態度だと知っておきましょう。

最初から関わる時間を明確にしておくことはとても大事なことです。傾聴が始まってから、お互いに時間が区切れずに長時間におよんでしまうと、両者ともとても疲れてしまい、場合によっては逆効果になってしまいます。

②今の気持ちを聞かせて欲しいと伝える。

「今の」というところが、語り手にも聞き手にも重要です。また、○○の件について、と相手の語る事柄を限定してしまわないように、今の気持ち、心境、気分などを聞かせてほしいとお願いすることで、できるだけ自由に本人に語ってもらいましょう。

③頷き、相槌を打ちながら、相手の話す言葉を聞く。

相手の語りが始まったら、「うん、うん。」「そうね。」など、相槌を打ちながら相手の言葉を聞きましょう。相槌は相手の言葉を肯定するというよりも、相手の語りを支えるイメージで打ちましょう。

④相手の語りをせき止めないように意識する。

とにかく、相手の語りをせき止めないように意識しましょう。傾聴は意見交換ではありません。あなたの意見や感想は少しの間、おいておきましょう。

⑤あなたの言葉の意味で考えず、相手の言葉のすがたを変えないように聞く。

相手の語っている言葉の意味を私の言葉の意味でとらえてしまわないように、相手の語っている言葉のすがたを変えずに聞くことに集中しましょう。

補足説明

言葉のすがたって?

言葉には「すがた」と「意味」があります。

「リンゴ」という言葉でいえば、

「リ」「ン」「ゴ」

「リンゴ」これが言葉のすがたです。

リンゴという言葉のすがたを変えないように聞くということは、

リンゴをリンゴと聞くということです。

同じように、

「リンゴが好きになった」という言葉のすがたを変えないように聞くということは、

「リンゴが好きになった」という言葉のすがたのままに聞くということです。

「リンゴが好きになった」を

「リンゴが好き」と聞いたら、

言葉のすがたが変わったということですね。

私にとって「リンゴ」という言葉の意味は、赤くて丸くて甘酸っぱい果物です。わりと一般的でしょうか。

そして私にとって「リンゴが好きになった」という言葉の意味は、

小さなころによく母にむいてもらった。他にも甘い食べ物がいっぱいあったから昔はあまり好きじゃなかったけど、今はあの甘さが丁度良い。それになんか懐かしい感じがする、です。

私の「リンゴが好きになった」には、上記のような意味があるのです。

ですから、私の「リンゴが好きになった」という言葉のすがたが相手に、「リンゴが好き」という言葉のすがたで伝わってしまったとき、私と相手の世界はいよいよ遠く遠く離れてしまうのです。

このように、それぞれの人間の言葉のすがたには、それぞれの人生が宿された意味が含まれています。

相手を傾聴するということは、私にとっての言葉の意味ではなく、相手にとっての言葉の意味を聞くということです。

そのための第一歩が、とにかく相手が語った言葉のすがたを変えないように聞くということなのです。

⑥相手の語りが途切れたら、あなたが覚えている相手の言葉のすがたを少しだけ相手に確認する。

相手の語りが行き詰まり、滞ってしまうときがあります。そんなときは、あなたが変えないように集中して聞いていた相手の言葉のすがたの中で、覚えているところをあなたの声にして、相手に伝えてみましょう。このとき、言葉のすがたを確認させてほしい、という態度で相手に臨むのが大事です。

⑦相手の反応を待つ。

あなたの伝えた相手の言葉のすがたの確認に対する相手の反応を待ちます。

⑧相手の反応がなければ、もう少しあなたが覚えている相手の言葉のすがたを相手に確認してみましょう。

相手の表情や身体の動きをしっかり見ましょう。もし反応がないようであれば、もう一度ゆっくりとあなたが覚えている相手の言葉のすがたを相手に確認してみましょう。

⑨また相手が語りだす。

また相手が語りだしたら、また相手の言葉のすがたを変えないように聞くことに集中しましょう。相手が語りだした内容が、直前にあなたが確認した言葉のすがたとは関係がなくても、すぐに切り替えて聞きましょう。

⑩繰り返し

時間が来るまで精いっぱい、③~⑨を繰り返しましょう。

⑪時間がきたらお礼を言って終わる。

時間がきたら、お礼を言って終わりましょう。相手の語りを無理に遮断してしまうことがないよう気づかいながらも、しっかりと終わりを告げましょう。

簡易傾聴法のロールプレイ

大学受験に失敗したA君のケース。お母さんは少しでもA君の悲しい、苦悩を和らげてあげたいと強く思い、簡易傾聴を試みました。

聞き手、母役 クロダ

語り手、A君役 感情探偵

 

クロダ
クロダ
今少しいいかな?
感情探偵
感情探偵
なに?
クロダ
クロダ
10分、15分くらいでいいんだけど・・・。
感情探偵
感情探偵
だから何?
クロダ
クロダ
少しあなたの今の気持ちを聞かせてほしいんだ。
感情探偵
感情探偵
話すことなんてない。
クロダ
クロダ
うん・・・。
感情探偵
感情探偵
・・・。
クロダ
クロダ
話すことなんてない。
感情探偵
感情探偵
ダメなやつだと思ってるんでしょ?
クロダ
クロダ
・・・。
感情探偵
感情探偵
・・・。
クロダ
クロダ
ダメなやつだと思ってるんでしょ。
感情探偵
感情探偵
そうだよ!あんなに頑張ったのに、結局落ちちゃうなんてさ。体調だって悪くなかったのに。答案だって全部埋めたのに・・・。
クロダ
クロダ
うん、うん。
感情探偵
感情探偵
去年、一年あんなに勉強したのに。落ちるために勉強したわけじゃないのに。
クロダ
クロダ
そうだね。
感情探偵
感情探偵
友達は受かったのに。僕だけ・・・、僕だけ・・・。
クロダ
クロダ
うん・・うん・・。
感情探偵
感情探偵
僕は、僕は・・・悔しいよ!
クロダ
クロダ
うん。
感情探偵
感情探偵
あんなに勉強したのに。
クロダ
クロダ
うん。
感情探偵
感情探偵
・・・。
クロダ
クロダ
悔しいね。あんなに勉強したのにね。
感情探偵
感情探偵
お母さんに何がわかるっていうんだよ!
クロダ
クロダ
うん、うん。
感情探偵
感情探偵
僕は、僕は悲しい、悲しいんだ・・・。
クロダ
クロダ
うん。
感情探偵
感情探偵
うぅ・・・。うぅ・・・。
クロダ
クロダ
悲しい・・・。悲しいね。
感情探偵
感情探偵
うん・・・。うん・・・。
クロダ
クロダ
・・・。
感情探偵
感情探偵
・・・。

 

15分を超え、20分ほどやり取りは続く。

 

感情探偵
感情探偵
僕は・・・僕はどうしたらいいんだろう・・・。
クロダ
クロダ
うん、うん。
感情探偵
感情探偵
なんとかしなきゃ・・・、なんとか・・・。
クロダ
クロダ
A君、15分が経ったね。
感情探偵
感情探偵
そう・・・。
クロダ
クロダ
うん。今日は聞かせてくれてありがとう。お母さん、もう行くね。また聞かせてね。
感情探偵
感情探偵
うん。
クロダ
クロダ
それじゃ。
感情探偵
感情探偵
お母さん。
クロダ
クロダ
うん?
感情探偵
感情探偵
ありがとう。

 

簡易傾聴法、こんなときどうする?

意見を求められた場合

とりあえず、少し間をとるのがいいかもしれません。それで相手の語りがまた始まればそちらの言葉についていけばいいのです。どうしても相手がこちらの意見を聞くことにこだわる場合は、すぐにまた傾聴に戻れるように、ごく短く中立的な意見を言うか、この時間は私の意見ではなく、あなたの意見を聞かせてほしい、と正直に気持ちを伝えても良いかもしれません。

自分の言葉で何かを伝えたくなってしまった場合

相手に意見を求められなくても、どうしてもこちらの意見を言いたくなってしまうときもあるかもしれません。しかし、わざわざ相手の言葉を聞かせてもらうためにお願いして調整した15分~20分ぐらいの時間です。自分の意見はできるだけ簡潔に伝えましょう。

しかし、聞かせてもらうつもりでやりとりを始めたのに、15分~20分で自分の意見を言いたくなるのなら、もしかしたら、あなたは相手の言葉を聞かせてもらいかったのではなくて、最初から相手にあなたの言葉を聞いてもらいたがっていたのかもしれません。

それはつまり、相手を助けたいのではなくて、相手に助けてもらいたいという動きです。今の相手にその余裕はあるでしょうか。

熟練のカウンセラーでも、クライエントとのやり取りの中で、自分の意見を言いたくなってしまうときがあります。そのときは、カウンセラーはクライエントに自分の意見を言ってみることもあります。

ただし、これはあくまで、カウンセラーが聞く態勢を迅速に取り戻すための苦肉の策であって、クライエントにカウンセラーの意見を通そうとすることを目的とはしていません。

自分の言葉でいっぱいになると相手の言葉が聞こえなくなってしまうため、自分の言葉を流してしまうために、クライエントに向かって声にする必要があるのです。そしてすぐにまたカウンセラーはクライエントの言葉にしっかりついていくのです。

傾聴の終わり方

約束の時間が来てしまっても、相手の語りが終わらないときはあります。そんなときは、ある程度のところであなたが区切ってあげることも大事なことです。

15分の約束だから、相手が語っている最中でも、15分でズバッと切る、というのはあまりに非情です。しかし、いつまでも区切ることができないのはよろしくありません。

相手に気が済むまで語らせてあげたい気持ちもわかりますが、傾聴の態勢を維持するのにはエネルギーがいることです。長引けば長引くほど、傾聴の体制を維持できなくなり、あなたはあなたの意見を相手に聞いてもらいたくなってしまうでしょう。

長く聞くことが親切であり、長く聞けば長く聞くほど相手のためになるということではありません。

「あんなところまで語りたくなかった。とても疲れて嫌な気分になった。」

良かれと思ってやったことでも、後日そんな感想を本人から聞くことは稀ではないのです。

簡易傾聴法に必要なイマジネーション

・相手の言葉を聞きながら、あなたがただそばにいることが、相手にとってどれだけありがたいことかを知る。

・否定も肯定もされず、つらさをただ、言わせてもらえることがどれだけ励みになるかを知る。

・感情は、声になり、他者に受容されると、留まらず、流れていく。

・相手の言葉のすがたを変えずに聞こうとする姿勢は、自分の言葉の意味を置いておけているという結果につながっていく。

・苦しむ相手のそばにいるときは、普段の自分の言葉の意味を離れ、相手の言葉のすがたに、ただついていくほうが楽。それは、相手の言葉のすがたを変えないようにと必死に聞いている最中は、相手の言葉に、あなたの言葉の意味で苦しむ暇がないからです。

・とにかく、今の相手というものを意識する。

・相手の言っていることがコロコロ変わっても動じない。

・1秒ごとに人は別人に変わるというイマジネーションは大事。

・人は、今、今、今、と止めどなく変わっていくのである。

・大丈夫と笑った次の日にはまた、苦しい顔をしている。

・それは裏切りや嘘ではなく、当たり前の変化なのである。

今ここの相手の言葉のすがたに着目したやり取りであるなら、深刻な悪化を招くようなコミュニケーションには決してならない。

・感情移入的理解とは、あなたが、相手の言葉のすがたそのものになるということ。

・本当に苦しんでいる相手には、あなたの慰めの言葉よりも、相手自身の言葉をあなたの声で聞かせてあげてほしい。

最後に

身近な人、大事な人が本当に苦しい思いをしているとき、自分のことのように苦しい気持ちになってしまうことがありますね。そんなときは、どうにかしてあげたい、どうにかしなければという気持ちになるのはとても自然なことだと思います。

しかし残念ながら、本当に苦しんでいる相手に対しては、あなたがなんとかしてあげようと躍起になればなるほど、その試みは相手のためにはなりません。

何もしてあげられない、代わってあげられない、助けてあげられない、だけどそばにいさせてほしい、そんな自分の覚悟が決まった時、あなたの傾聴は不思議な力を持ちます。

あなたの覚悟ある傾聴によって、あなたの身近な人、大事な人が少しでも助かり、そして、あなた自身が助かっていくこと、切に願っております。

 

カウンセラー黒田明彦

 

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