繊細で敏感なHSPの人は、対人支援の仕事に向いているでしょうか?
今回は、精神保健福祉の世界で10年以上働いた経験から、HSPと福祉の仕事の相性について書いてみようと思います。
私自身は逆エンパスを自覚していますが、HSP要素も満載なので参考にできるところもあると思います。
是非読んでみてください。
HSPと福祉の仕事、まずHSPとは?

HSPとは、繊細で敏感な人のことです。
- 情報を深く処理してしまう
- 感受性が強い
- 共感力が高い
- 些細な刺激を感じ取る
上記4つの特徴を同時に持つ人だと言われています。
また、HSPは性格や、病気ではなく、生まれつきの気質です。
HSPが福祉の現場で活かせる能力

私が働いていたのは精神障害福祉の分野ですが、これから紹介するHSPの能力は、発達障害福祉、知的障害福祉、身体障害福祉、の分野でもある程度応用が効くものだと思われます。
HSPは言語化がうまくない当事者に感情移入できる
HSPの深い情報処理能力や、些細な刺激を感じ取る気質は、なかなか自分の感情を言語化できない、当事者の方に感情移入的に理解するために貴重な能力です。
非HSPが見逃してしまうような、当事者の微細なサインを感じ取り、しっかり意思疎通がとれるのは、HSPだからこそできる、素晴らしいことです。
HSPは当事者の気持ちに寄り添える

共感力の高いHSPは、当事者の気持ちに寄り添うことが得意です。
HSP自身、感受性が強いので、当事者が普通の人にとっては小さなことに悩んでいても、そこに誠心誠意、しっかり寄り添うことができます。
当事者はHSPにわかってもらうことを期待して、安心して相談することができます。
HSPは細かい配慮が得意

特に精神障害の人はそうかもしれませんが、普通の人は気にならない些細な刺激に敏感に反応し、調子を崩したり、感情的になったりしてしまうことがあります。
その当事者の動きをしっかりとらえ、事前に適切な配慮ができるのはHSPならではの能力だと思います。
相手のエネルギーの動きを敏感にとらえ、問題が起こる前に、ササッと対応して、未然に防ぐことができる。
普通は必要にならない特別な配慮をしっかりとすることができるのはHSPの強みですね。
些細なことで調子を崩す当事者と、些細なことに敏感なHSPは相性が良いのです。
HSPがしっかり対応できている施設は、トラブルが少ないかもしれません。
HSPはどこか、当事者とシンパシーがある
これは、良し悪しかもしれませんが、HSPも当事者もどこか同じ穴のムジナ感があります。
なので、なんとなくわかってもらえる、なんとなく同じ世界を共有できているという感覚があります。
近い言葉の温度、近い言葉の深さでやりとりできることは、当事者にとっては、とても貴重で、ありがたいことなんですよね。
HSPが福祉の現場で気を付けるべきこと

対人支援の基本的なことですが、HSPは特に気をつけなくてはならないことがあります。
HSPは自分の心の状態の維持に気を遣わなくてはならない
まずは、自分の心の状態の維持です。
当事者の前では基本的に穏やかな気持ちを維持しなくてはならないので、いつも心に余裕が必要です。
自分の心のコンディションを保てるように、日々努力が必要です。
慣れてくれば、結構大丈夫なんですけどね、当事者は優しい人が多いですから。
HSPはバウンダリー(他者との境界線を引く)が必要

HSPの共感力や感受性が悪い方にはたらいてしまうと、結構大変です。
当事者の境遇に同情しすぎてしまって、余計な介入をして当事者の自立を阻害してしまうのは最悪です。
対人支援の基本は自立支援です。
当事者が支援者なしでも生活していけるようになるのが目標です。
そこを第一に考えて、しっかりと、職員として自分の役割とやるべき仕事の範囲に線を引きましょう。
また、当事者の感情表出を目の当たりにして、動揺しすぎて仕事が手につかなくなってしまうこともあるかもしれません。
まぁ、その辺りはHSPだからしょうがないんですが、しっかり先輩や同僚を頼るなどして、自分の心を落ち着けて、長く当事者の前で動揺することがないようにしましょう。
福祉の現場はHSP自身が癒されたくて働いて良いものか?

「福祉で働いている人は皆、親切で優しいから、働きやすい職場のはずだ!」
そう考えるHSPはどれくらいいるのでしょうか?
あえて、極端に言えば、福祉職員が優しいのは当事者に対してだけです。
職員には職員としての役割や態度が当然にして求められます。
職員が福祉の現場で癒されるとしたら、心優しい当事者とのやりとりで癒されるとか、少しずつ成長していく当事者支援にやりがいを感じるとか、その辺りです。
職員同士はそれなりにギスギスしています。
というのも、これ、結構エネルギーの流れ的には当たり前なんですよね。
職員はエネルギーの放出先が必要

職員はとにかく当事者に配慮します。
当事者が何かをやらかすのは前提です。
職員が当事者をサポートするのは前提です。
だから、当時者がどんな粗相をしても、職員は基本的には暖かく対応します。
しかし、当事者とのやり取りの中で、職員に嫌なエネルギーが生まれないわけではないのです。
嫌なエネルギーが生まれたとき、それを当事者に向けることができない職員はどうするか?
その嫌なエネルギーは他の職員へと向かうのです。
「あの職員が、もっとしっかりしてれば、この当事者のミスは起こらなかった!」
みたいにね。
生まれたエネルギーはどこかで放出されなければなりません。
職員のエネルギーの解放に無頓着な職場はギスギスしていて当然です。
HSPは知っておいたほうが良いことですね。
福祉の現場は職員の入れ替わりが激しい

私は福祉の業界でしか働いたことはないですが、他の企業の話を聞いていると、それでもやはり福祉は全体的には優しい職場なのかもしれない・・・と思う事もあります。
基本的には施設の収入は行政からの補助金であると言うことも大きいでしょう。
売り上げを上げろ!利益を出せ!って血走る感じがないのは、HSPには嬉しいですよね。
それでも福祉職員の入れ替わりは激しい
ただ、基本的に福祉業界の人材は入れ替わりが激しいです。
当時、半分冗談、半分本気な感じで、先輩に「3年やれたらもう中堅だよ」って言われたものです。
福祉職員がすぐにやめてしまう原因の1つが、給料が安いということがあげられます。
今はそれでも改善されてきてはいるのですが、福祉業界にお金持ちになりたくて入ってくる人は、多分1人もいないと思います。
15年以上前の私の初任給は、生活保護のお金より少なかったという自虐話まであるくらいです。
あとは、福利厚生も弱いですね。
基本的に税金で運営している福祉施設が、資金潤沢という状況は必要ないと思いますが、福利厚生は他の企業と同じ程度のものを期待しないほうが良いでしょう。
良くも悪くも組織力が弱い

後は細かい話になってきますが、福祉の施設は組織として弱いところが多いので、どんな職場環境になるかは、そこで力を持っている人間次第という感じになります。
いわゆる「上司と合わない」が他の企業よりも顕著に出やすいかもしれないですね。
HSPとしては気になるところですね。
HSPと介護業界の相性は?

私に言わせれば、福祉と言えば、障害者福祉ですが、多くの人にとっては福祉と言えば、老齢福祉、介護福祉のことが浮かぶのではないでしょうか?
私は老齢福祉、介護福祉の業界で働いたことはありませんが、漏れ聞こえる話だと、かなり職場環境が厳しいところが多いと聞きます。
HSPは、たとえ、通常業務にやりがいを感じたとしても、職場環境が厳しければ、どんどん調子が悪くなってしまうのではないでしょうか。
ご時世的に、働き口が多いのはとても魅力ですが、心も身体も相当丈夫な人が続けていける業界、というのが私の介護業界の正直な印象です。
HSPは福祉の仕事に向いているのか?おわりに

「HSPは福祉の仕事に向いているのか?」というところで書いてみました。
手前ミソ感はありますが、個人的には、HSPと精神障害福祉の仕事の相性は良いのではないか?と思っています。
最近は厳しくなってしまいましたが、当時の精神障害福祉の業界は、どこよりも多様性が認められていた職場だったように思います。
いろんな職員がいて本当に面白かった。
そして、自分もありのままで許された気がした。
社会の枠に当てはまらない人たちを対象に支援していくのだから、職員も社会の枠に留まらない寛容さが必要だからですね。
うん、私は好きでしたね、精神保健福祉の現場が。
もしかしたらHSPにとっての穴場的な職場かもしれないですよ。
よろしければ、あなたも少し検討してみませんか?
冥王、黒田明彦でした。
私のエネルギー、もらってね。